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(第3回)英語で考えて話すスピーキング

英語の「音」と「曖昧さ」に慣れる

本特集の第1回で英語の音をありのままに聞くこと、第2回では英語を前から順に読み、想像力を使って60%程度の意味を理解する、曖昧な状態に慣れることが大切とお伝えしました。スピーキングで「音」が重要なことはわかりますが、「曖昧さ」に慣れるとはどういうことでしょうか。

 

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「英会話」と「話したいことが話せること」は違う!

 

スピーキングはT字型

 

まず広く浅く学ぶ「英会話」と、特定の分野を深く表現したい「話したいことが話せること」は違うことを理解しましょう。それはちょうどアルファベットのTの字の横線と縦線に相当します。

 

英会話は日常生活で必要な会話の決まりごと(Tの字の横線)

 

英会話で学ぶことは、挨拶、買い物、海外旅行など、生活で使う会話の決まりごとですから、覚えればOKです。会話のルールですから、覚えるしかないとも言えます。これは日本語でも同じです。

 

話したいことを話すのは独自の世界(Tの字の縦線)

 

一方、話したいことは、仕事、趣味など各人が興味を持っていることです。話の展開や論理、背景に対する総合的な理解、独特の表現や用語などカリキュラムや教科書にまとめることが難しくなります。

 

スピーキングの目的は何ですか?

 

ですから、もし皆さんが海外旅行や外国人との日常会話を楽しみたいと思っているなら「英会話」を勉強すると良いでしょう。状況別にまとめられた教科書にある表現を、必要なところから覚えていけばOKです。

でも自分が伝えたいことを英語で話したいと思うなら、その内容は自分にしかわかりません。そのため英語教材のカスタマイズが必要となります。

 

話したいことを英語で話せるようになる「英借文」

 

ではどうすれば話したいことが話せるようになるのでしょうか。それはリスニングやリーディングを通じて、自然な英語表現を集め、少しばかり単語を入れ替えて、声に出すことを繰り返す「英借文」です。日本語から英語を作るような頭を使うことを一切やめることが大切です。

リスニングには英語の音が聞き取れるかという課題がありますので、多くの人にとってはリーディングが最も効率の良い学習法になります。仕事や興味のある分野についての英文を読み、それを覚えることで表現力をつけていくのです。

大変なことのように思えますが、関心のあることだからこそ、意外と簡単に覚えられます。ところが多くの人はリーディングとスピーキングを関係ないものと思っているので、とても損をしています。

Foto: Stephan Röhl
Foto: Stephan Röhl

 

英会話とは相手の「音」を聞いて「想像」すること

「音を聞くこと」を避けて通れない

 

言語は音声を通じてコミュニケーションを取ることです。つまり音を聞くことを避けて通ることはできません。そして音はその場限りのものですから、もう一度聞きたいと思ったら相手に頼まないといけません。

 

「想像すること」を避けて通れない

 

ところが、お互いの背景や知識が異なるので、1度聞いただけで100%聞き取ること、100%意味を理解することは、とても難しいことです。後戻りはできませんし、相手に待ってもらって辞書を引くこともできません。

聞き取れなかったら質問すればよいと言われますが、実際はそう簡単ではありません。次に必ず聞き取れるとは限りませんし、何度も聞き返してばかりでは会話になりません。相手もウンザリしてしまいます。

つまりスピーキングとは、想像力で補いながら、正しい理解を求めて確認する作業にならざるをえないのです。海外旅行や留学でも同様のことが起こります。店に行けば店員がいつも同じフレーズを使うので、こういう意味かなと想像して次第に慣れていくのです。

だからといって、話す相手がいないとスピーキングの練習ができないわけではありません。想像力を働かせてリスニングやリーディングをすればよいのです。

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スピーキングは頭を使ってはいけない

スピーキング習得の基本:英語の音を聞き取る

 

まず相手が話す英語の音をありのままに聞き取ることが必要です。音を正しく聞き取るための練習法があります。詳しくは第1回カタカナ・ディクテーションをご覧下さい。

(第1回)英語の音をありのままに聞くリスニング

 

スピーキング習得の重要課題:意味を想像してみる

 

次に相手の言っていることを100%聞き取り、100%意味を理解することなどできないと意識しましょう。頭を使う文法や記憶ではなく、背景や状況から想像してみます。前から順に読み、後戻りをしない、第2回のスラッシュリーディングと、曖昧な状態に慣れるコンテキストリーディングをご覧下さい。

(第2回)英語脳を育てるリーディング

 

スピーキング習得の仕上げ:聞いた通り声に出す

 

あとは聞いた英文が使われた状況と大意を理解し、そのままの音で発声して表現を覚えるだけです。意味は曖昧で良いので、むしろそれが使われた状況(コンテキスト=文脈)に沿って口に出してみましょう。

カタカナ・ディクテーションで書いたカタカナの通りに発音したらネイティブ・スピーカーに上達したねと褒められた方もいます。スピーキング上達の見本です。

帰国子女はいきなり英語を話しているわけではありません。彼らは約2年間、ほとんど話さず、想像しながら聞いて読む、インプットの生活を続けます。そしてある日グラスに注いだ水が溢れるように英語を話し始めるのです。

音を聞き、想像する作業を繰り返し、最後に声に出すという形で現れます。頭を使う記憶や文法などほとんどありません。息を吐くために吸う、というようなことなのです。

 

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単語を知らなくても話せる人たち(アメリカESLでの例)

訳を期待できない移民たちの英語学習

 

アメリカでは移民や滞在者のためにESLと呼ばれる英語のクラスがあります。移民は世界各国から集まるので、訳を用意したりできません。すべての授業が英語です。

もちろん和訳もないので、少なくない日本人が挫折してしまいます。一方、東欧や中南米の人たちは、ロシア語やスペイン語の訳がなくても英語が話せるようになります。この違いは何でしょう。

 

曖昧な記憶でもよいので知っている表現で発信する

 

授業では簡単な絵を示して英語で表現してみる演習があります。ある日、病院にいる子供の絵が課題として出されました。

日本人の生徒は黙り込んでしまいましたが、彼らは「He is a boy.」と答え、先生は「Good!」と反応します。短い文で言い切り、何か補足があれば、He is a boy. He is waiting.などさらに短い文を追加して意味を補います。

日本人はそんなバカみたいなことで良かったの?と驚いてしまいます。どんな病気だろうと考えてしまい、どう表現すればよいのかと悩んで何も言えなくなっていたのです。そして先生の方は、日本人は本当に英語ができないんだと驚くことになります。

本当の問題はこのあとです。こんなバカな答で良いなんて、このクラスは私にはレベルが低い、そんなことくらいなら話せると考えてしまう人が少なくありません。

黙っていてもコミュニケーションは始まりませんが、He is a boy.と言えば何かが始まります。何も始められなかったことがスピーキングにとって最大の問題なのです。

 

英語の音と曖昧な状態

 

曖昧な状態とは英語脳へと育つ基礎のこと

 

英語の音をありのままに聞き、意味は曖昧な状態のまま、聞いた音をそのまま口に出して言えますか?スピーキングに必要なことはたったこれだけです。

そのために、この文脈で使われている英文は「こんな意味かな?」という60%程度の理解を、想像力で補う練習をします。すると同じ状況に出会ったとき「こんな感じで通じるかな?」という感覚で話すことができるようになります。

和訳で100%確認していると、完璧な英文を作らないと心配で話せません。でも完璧な英文は真似ることからしか作れませんから、矛盾に満ちた状態に陥ってしまいます。話したいことを日本語で発想するとこういう状態になります。

話しても通じなければ、相手が言い換えて確認してくれます。その音を聞き取って状況と共に覚えましょう。何と言ったか書いて欲しいと頼めば確実です。このようにして英語を英語で考える習慣がついていきます。曖昧な状態とは英語脳へと育つ基礎なのです。

 

スピーキングの実践トレーニング

1人でもできるスピーキング練習法

 

第2回で出した英文「The FBI is ramping up its facial(何とか)database.」を覚えていますか。Ramp upの意味が想像できたかどうかがカギです。これを前から順に理解します。

できれば音を聞いてみましょう。聞いた通り口に出して言えるか?をチェックします。

次に「FBIが顔・何とか・データベースをアップさせる」という程度の理解ができたら、とにかくその音の通り発声してみます。(何とか)の部分は省いても通じます。これなら1人でもトレーニングできますね。

もし相手がいたら使ってみましょう。反応が良ければそれでOKです。悪ければ相手が確認してきます。多分こんな風に補ってくれるでしょう…Yes, they are using facial recognition database.

こんな感じで英語は話されています。

 

英会話教室の使い方

 

スピーキングの練習は相手が必要と、Skype英会話などの教室を利用する方が多いようです。でも教室ではあんなに話せるのに、なぜ話したいことが話せるようにならないのか不思議に思いませんか。

それは講師が生徒のレベルに合わせてくれているからです。英語は実力に応じたことしか話せません。言い換えれば、実力に応じたことなら話せるのです。楽しみの場として自信をつけるにはとても良い環境です。

ただし上達に時間がかかるでしょう。本当に話したいことを特にネイティブ・スピーカーの講師には伝えられません。これが英語でできれば苦労しません。

レッスンの時間も少なすぎます。言いたいことがほとんど無いのなら問題ありません。本当にスピーキングを習得したければ、リスニングとリーディングを活用する方が効率的です。

 

 

スピーキングにおける2つの上達曲線

 

スピーキングの上達のためのトレーニング法

想像さえできればスピーキングは易しい

 

頭を使って100%を目指すのをやめる(60%を目指す)トレーニング法です。

・カタカナ・ディクテーションで英語の音を聞き取る
・スラッシュリーディングで前から順に英文を理解する
・コンテキストリーディングによる想像力で意味を補う
・聞いた英文をそのままの音で、曖昧な意味の理解でよいので使ってみる

(ここまでは1人でできます)

・相手の言うことを曖昧な理解のまま伝えて、正しいか確認してみる
・これを何度も繰り返して理解を100%に近づけていく

 

なぜTOEICのスコアは低いのに英語が話せるのか?

 

これまで英単語を覚えましょうという話はほとんど出てきませんでした。ボキャブラリーが少なくても、TOEICのスコアが低くても、英語が話せることを示したかったからです。

第2回で説明した「リーディングにおける2つの上達曲線」は、ボキャブラリーがわずかでも英語を理解できることを示した図です。今回はこれによく似たスピーキングの図を掲載しています。わずかなボキャブラリーで英語を聞き取り、話すことはすぐできるようになることを示しています。

この図の中にある「曖昧な状態」は、和訳を見ないで想像することで作り出せます。そうしないと「英語脳」(英語を英語のまま理解するスキル)は育ちません。

それから英単語を覚えていけば、英語の理解力(リスニングとリーディング)と発信力(スピーキング)は驚くほど上達します。

 

最後にもう一度

 

日本人は1度で100%理解できるという幻想を抱いています。だから英語が苦手なのです。まずはこれを捨てることが上達の第1歩です。

スピーキングとはこの曖昧な状態を続けられる能力と言ってもよいくらいです。和訳を一切使わず意味を理解するトレーニングで、あなたも英語脳を目指してみませんか。

次回はライティング、特に英文メールの書き方について説明します。頭を使わない方が通じる英文メールが書けることをご紹介しましょう。

(第1回)英語の音をありのままに聞くリスニング
(第2回)英語脳を育てるリーディング
(第3回)英語で考えて話すスピーキング

(第4回)通じる英文メールライティング
(第5回)英語の学習に日本語は必要か?

質問があればいつでもinfo@funlearning.co.jpへお寄せ下さい。

「Fun英語」英語力強化ワークショップ

 

 

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