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始めるのが早いほどいいって本当?英語学習と記憶の関係

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英語は子どもの時から習わないといけないと言われて、もう手遅れと思っていませんか。今は幼児向けの英語教室などが流行っていて、

「大人になってからじゃ遅い」
「小さいうちから始めないと」
というようなキャッチコピーが氾濫していますね。

 

でも実は、子どもから英語を習っても、すぐ忘れてしまうことが少なくないのです。
「小さい頃に習わせていたのに、中学で英語を学ぶ頃にはすっかり忘れてしまっていた」
「小学生のうちにやめてしまったので、中学の英語の成績はいたって人並み。習わせなくても同じだったのかも…」
このように嘆くお母さんが多勢います。

 

結論から言うと、英語はいつ始めても大丈夫です。問題は、始める時期ではないのです。だから、早く始めなかったことを気にしすぎて、諦めたりしないで下さい。さて、始める時期が問題ではないとしたら、一体何が問題なのでしょうか…

 

英語教室をやめた子どもたちのその後

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私はある時、随分前に教室をやめてしまったかつての教え子たちに会う機会がありました。そこで、彼らにこんなことを尋ねてみました。
「小さい時に英語を習っていたことで、中学校に入ってから英語の授業で得をしたと思ったことはある?」

 

すると、
「ない」
「あまりない」
と残念な答えを率直に返してくれる子どもたちがいた一方で
「発音が良いとALTの先生に褒められた」
「リスニングテストがまったく苦にならない」
「単語のリーディングで苦労しない」
「英語の長文は、日本語に訳さずにそのまま読み流せるので、速読ができる」
といった、興味深い答えも返ってきました。

 

教え子の追跡調査など滅多にできないことだったので、私は彼らの答えをすべて書き留めて、家に帰って、英語教室の受講記録と照らし合わせてみました。すると、両者の分かれ目、つまり小さい頃に習った英語を忘れる子と忘れない子の分かれ目となる要因が、はっきりと浮かんできたのです。

 

さて、一体何だと思いますか?
習い始めの時期?
やめた時期?
習っていた期間の長さ?

 

分かれ目はリーディングとライティング能力だった

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その分かれ目は、習い始めの時期でも、やめる時期でも、習っていた期間の長さでもありませんでした。早くに習い始めても忘れる子、やめる時期が遅かったのに忘れる子、かと思えば、通っていた期間が比較的短いのにしっかり今の英語力へと生かしている子…。

 

どれも人それぞれなので、きれいにグラフにまとめるということは難しいのですが、一言で言うと
「習い始めが早く、やめるのが遅いほど忘れにくい、というわけではない」
という事例が多々あったのです。

 

実は、それ以上に大きく作用している要素がありました。それは、
「やめる時に、英語のリーディングとライティングができるレベルに達していたかどうか」
ということだったのです。

 

英語のリーディングとライティングを始める前にやめてしまった子どもは、中学校に入ってからの英語力にはさほど結びついていないようでした。それに対して、リーディングとライティングを習ってからやめた子どもは、早くにやめてしまっても英語の感覚を覚えていて、中学校に入ってからの英語の授業やテストにおいても、それが生きていると感じているのです。

 

また、英語を習い始めた時期に注目すると、早く始めた子は、発音やリスニングなど英語の音に対する敏感さにおいては、確かに優れていました。しかし、それ以外の部分については、早く始めたことによる明らかな優位性というのは、言われているほど高くはなかったのです。

 

大人の英語学習も、この点から見ると、英語の音については遅く始めた不利があるかもしれません。しかし、それさえ乗り越えれば、決して手遅れだと思う必要はないとも言えますね。また、その「英語の音」についてすら、英語そのものがグローバル化して各国の訛りが当たり前になってきていますから、発音がカタカナ英語だとしても何ら恥ずかしい時代ではなくなっています。

 

なぜリーディングとライティングなのか

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話を、子どもと英語のリーディングとライティングに戻しましょう。なぜ「英語をリーディングとライティングができるレベルまで習う」ことが、「習った英語を忘れない」ことに繋がるのでしょうか?

 

調べてみると、この状況をきちんと説明できる理由が見つかりました。英語に限った事ではありませんが、言語には、
  ①リスニング
  ②スピーキング
  ③リーディング
  ④ライティング
の4つの技能が存在します。「①リスニング」「②スピーキング」は音声言語と呼ばれ、「③リーディング」「④ライティング」は文字言語と呼ばれて、区別されます。

 

赤ちゃんが母語を身につける時を思い浮かべて下さい。まず鉛筆を握りしめて読み書きの練習(文字言語)から始めたりはしませんよね。お母さんや周りの人の話し声をたくさん聞かせてもらっているうちに、真似をするようになって、少しずつしゃべり始めます(音声言語)。しかし、読んだり書いたり(文字言語)できるようになるのは、それから何年も先のことです。

 

このように、人間が母語を自然に身につける過程において、文字言語は必ず音声言語の後に登場します。それは、文字言語が、音声言語に比べ、脳内において高度な処理を必要とするからです。そして実は、この「高度な処理」というのが、長期的な記憶――つまり、小さい頃に習った英語を忘れないことに繋がっています。

 

確かに、聞いたり話したりすることは2歳児にもできますね。ですが読み書きには、それらとは一線を画する難しさがあります。読むという作業には、文字の形を覚え、文字と音の繋がりを理解することが必要です。さらに書くということになると、スペルを覚え、それを自分の手で再現するわけですから、より確かな記憶が必要になります。

 

ここまでたどり着いておくと、その言語がやっと脳にしっかり刻みこまれるということなのですね。つまり、子どもに英語を習わせる時、リスニング・スピーキング(音声言語)の段階でストップしてしまわず、リーディング・ライティング(文字言語)にまで昇華させておくことが、英語を忘れさせない秘訣のようです。

 

せめて単語が書けるまで

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ところで、一口に読み書きと言っても、レベルが色々ありますよね。アルファベットが分かる・書けるだけというレベルから、長い文章を自分で作り出せるレベルまで、その幅はとても広いはずです。一体どのレベルを達成しておけばよいのでしょうか?

 

もっと詳しく分析してみると、そのハードルは案外低いことが分かりました。アルファベットが個別に書けるというだけでは不十分なのですが、短い簡単な単語(3~4文字くらい)が無理なく書き出せるくらいでよいというものでした。

 

ここを超えておくか、超える前にやめるかが、分かれ目になっていたのです。もちろん、本当はこのリーディング・ライティング能力を伸ばせるところまでできるだけ伸ばしておくに越したことはないのですが…「習った英語を忘れさせない」という観点からすると、最低限超えておくべきラインはこの辺りにある、ということです。

 

まとめ

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いかがでしたでしょうか?
小さい頃から習っていてもリーディング・ライティングまで辿り着いておかなければ忘れてしまうのだとしたら…始めるのが遅かったということに、引け目を感じなくてもよいとは思いませんか?

 

お子様が英語を習っている方は、短い単語が書けるリーディング・ライティングの入り口までは進ませて、その英語を確かな記憶にしてあげて下さい。